客中(続天 28)

吟譜(PDF)

作者:一休宗純

(一三九四~一四八一年)(明徳五年~文明十三年) 室町時代の僧侶。京都大徳寺(臨済宗)の住持。字は一休。諱(いみな)宗純。応永元年後小松天皇を父とし、藤原氏を母と して京都に生まれる。六歳の時安国寺の僧となり、十三歳で詩名を博し、二十二歳近江堅田に華叟宗曇(けそうそうどん)の門下となる。二十七歳の時印 可をうけ、各地を漫遊して奇行が多かった。また書画を良くし、狂歌に妙を得ていた。文明十三年十一月二十一日没す。年八十八歳。狂雲集、一休骸骨、一休法語等の著書がある。

語釈

一休は大徳寺の住持として迎えられたが、この寺に住むことはなく放浪の生活を送った。剃髪せず髭も剃らなかった。着ている袈裟はぼろぼろ、手には朱鞘を佩いた木刀を持ち、「今の僧はこんなもんじゃ。見た目には飾っているが、中身は用立たずの木刀よ」と、厳しい批判をくり返した。自身が男色や女色に浸っていることを隠そうともせず、晩年には森侍者という側女に身辺の世話をさせた。江戸時代、説話のモデルとして一休噺に登場した。小僧の一休が知恵を出して難問を解決する噺は人気を呼んだ。

この詩を放浪中の一休心中を詠んだものとしてみればその味わいは更に深くなる。風さえ吹いた跡を、白雲に残していくのに、一休の放浪はその跡さえ留めることはない。古寺の鐘の音が聞こえているばかりだ。

範吟

素読・範吟 鈴木精成