雁を聞く(続天 38)

吟譜(PDF)

作者:韋 応物

(七三六年~七九一年?)長安京兆の人、中唐の詩人、若くして玄宗に仕え蘇州の知事となり善政が多く名声を博した。
五言詩に長ず。孟浩然や王維を受け継ぐとされ、柳宗元も一括して”王孟韋柳”と並称される。

語釈

◎秋の夜、雁の鳴くのを聞き故郷を思っての作。
*故園・・・ふるさと。
*渺・・・・ はるか。ひろい。水面が広々とはてしないさま。
*帰思・・・帰らんとする思い。
*淮南・・・淮南河と長江に挟まれた一帯、今の安徽省。
*高斉・・・楼上にある書斎。

通釈

私の故郷は遥か遠くでどのあたりか見分けもつかない、帰らんとする思いはますます深まるばかりで、淮南に秋の雨が降る夜高楼の書斎で雁の鳴き渡るのを聞いている。

鑑賞

秋になり雁が北から南の淮南あたりに飛んできた。その雁の鳴き声を聞いて故郷を思う作者は北方の出か。雁には便りがつきもの。雁の足に手紙を付けて届けたという故事がある。故郷から便りのないのを嘆いているのだろうか。

範吟

素読・範吟 鈴木精成