下邽荘南の桃花(続天 39)

吟譜(PDF)

作者:白 居易

(七七二~八四六年)は、中唐の詩人です。字は「楽天」でしたから「白楽天」とも呼ばれています。酔吟先生(すいぎんせんせい)とも香山居士(こうざんこじ)とも号していました。弟に白行簡という人がいます。 白居易は現在の河南省新鄭市(しんていし)に生まれました。子どもの頃から頭脳明晰で五~六歳で詩を作ることができ九歳で声律を覚えたと言われています。彼の家系は地方官として役人人生を終わる男子も多く抜群の名家ではありませんでした。安禄山の乱以後の政治改革により比較的低い家系の出身者にも役人になる機会が開かれたので二十九歳になって科挙の進士科に合格しました。以降役人として各地に赴任しています。七十一歳のとき退官し七十四歳のとき自らの詩文集『白氏文集』七十五巻を完成させ、その翌年の八四六年に七十五歳で生涯を閉じています。

語釈

*下邽荘・・・白居易の故郷にある別荘。
*多情・・・・愛情の深いこと。
*解惜・・・・理解し愛でる。

通釈

村の南には、どこまでもきれいな桃の花が、きれいに咲いている。その美しい花にひかれて見にきたのだが、自分のほかに見る人は誰もいない。夕方になり風が強くなって、真っ赤な花が、地面いっぱいに散った。花はいったい誰の為に咲き、散ってゆくのか。この花の風情を理解し愛(め)でる人が、自分の外にいないとは寂しいことである。