漢江(続天 41)

吟譜(PDF)

作者:杜 牧

(八〇三~八五二年)晩唐の詩人、字は牧之(ぼくし)、号は樊川(はんせん)、京兆万年(陝西省長安県)の人。 名家の出身にして八二八年進士に及第後、地方、中央の官を歴任し中書舎人となって没す。年五十歳。資性剛直、容姿美しく歌舞を好み、 青楼に浮名を流したこともあった。樊川文集二十巻、樊川詩集七巻あり、阿房宮賦(あぼうきゅうふ)は早年の作にして文名を高めた。

語釈

*漢江・・・川の名 中国陝西(せんせい)省寧羌(ねいきょう)県に発し湖北省の漢口で揚子江に注ぐ
*溶溶・・・水のさかんに流れるさま
*漾漾・・・水の波立ち動くさま
*白鴎・・・白いかもめ
*綠淨・・・緑色の水が美しくすみきっていること

通釈

漢江の水はさかんに波立ち流れて、その上を白い鴎が飛んでいる。春景色もようやく深まり、 美しい緑色の流れは、衣を染めたいくらいである。しかし世の人は、この好景にも、南へ北へと忙しく往来して、 心のゆとりもなく老いてゆくようであり、一層の悲痛を感じるのである。ふと見ると西に傾いた太陽は、その影長く 釣りから帰って来る船を送っている。

範吟

素読・範吟 鈴木精成