雲(続天 56)

吟譜(PDF)

作者:大窪詩物

(一七六七~一八三七年)(明和四年~天保八年) 徳川中期の漢詩人。常陸(ひたち 茨城県)多賀郡大久保村に生まれる。通称柳太郎、名は行光(ゆきみつ)、字は天民、詩佛はその号、また痩梅(そうばい)、詩聖堂の別号あり。江戸に移り住み、諸州に遊び京師の賴 山陽をも訪ねた。草書と詩を以て名高く、市河寛斎(かんさい)、柏木如亭(じょてい)、菊池五山(ござん)と共に江戸の四詩家と称せられる。習性酒脱、谷 文晁(ぶんちょう)と親交あり、好んで墨竹を画(えが)き甚だ気韻に富む。天保八年二月に没す。年七十一歳。相州(神奈川県)藤沢に葬る。著書に詩聖堂詩集、その他多数の詩集がある。

語釈

*霏霏・・・雪 雨などがしきりに降るさま。
*漠漠・・・ぼんやりとしてとりとめのないさま。
*紛紛・・・入りまじってみだれるさま。
*須臾・・・しばらく。

通釈

霧に似て霧にあらず、煙に似て煙にあらず、また雨に似て雨にあらず。霏霏と降りしいていると思えば、漠漠と散りしき、また紛紛と乱れ散る。しばしの後、一陣の風が吹きおこって、これを持ち去って行き、前山をつつみこんでしまう一群の雲になってしまった。

備考

この詩は、雲を詠じた詠物詩である。奇想また雲の如しというべし。