隈川雑詠(その二)(続天 58)

吟譜(PDF)

作者:広瀬淡窓

(一七八二~一八五六年)(天明二年~安政三年)・ 日田出身の江戸時代の儒学者で、教育者、漢詩人。日田の長福寺に塾を開き、これを後の桂林荘、咸宜園(かいぎえん)へ発展させた。咸宜園は一八九七年まで存続し、入門者は全国各地から集まり、延べ四〇〇〇人を超える日本最大級の私塾となった。豊後三賢人の一人。日田市長や衆議院議員(郵政大臣)だった広瀬正雄氏は淡窓の弟の広瀬久兵衛の子孫であり、その子息は現大分県知事の広瀬勝貞氏である。

語釈

*晩雲・・・夕暮れの雲。
*翠微・・・山の中腹から八合目あたりをさす。

通釈

観音閣上に夕雲が帰って来る。その雲に見とれているうちに、ふと山腹から鐘の音が聞こえてくる。その音に、われにかえって渚に目を転ずれば、客が渡し船の席を奪い合って、なかなか船が出せないのが見える。折から、二対の白鷺が、下界の人間の争いなどきにもならぬげに、美しい色を川面に映して、心地よく飛んでいる。