軍城早秋(続天 64)

吟譜(PDF)

作者:嚴武

(七二六~七六五年)唐の武将。字は季鷹。華州の人。肅宗の時、剣南節度使となり、吐蕃(今のチベット)を破り、礼部尚書となり、後、鄭国公に封じられた。杜甫のよい理解者であった。

語釈

*軍城早秋・・・駐屯軍の本拠地の町での初秋。
*早秋・・・・・初秋。陰暦七月。
*漢關・・・・・漢民族が護る山間の道のとりで。
*山・・・・・・北方の異民族の地の雲や辺疆に降る雪が(チベットと境界を接している)蜀の国の西の方の山に満ちてきた。
*朔雲・・・・・北方のえびすの地の雲。北方の雲。
*飛將・・・・・前漢の名将軍・李廣(李広)のこと。
*追・・・・・・おう。追撃する。
*驕虜・・・・・驕り昂ぶっている異民族。
*沙場・・・・・(砂煙が起ち上がる)戦場。
*匹馬・・・・・一匹の馬。
*還・・・・・・出かけていた者がくるりと向きを変えてもどる。

通釈

昨夜は秋風がわが城塞にも吹き、北の蛮地にわく雲、辺境を照らす月の光が西山の峰々に満ちわたった。今度こそ、わが信頼する勇将をして蛮族どもを徹底的に追撃するつもりだ。砂漠の戦場を駆け巡る蛮族の騎馬を、一匹たりとも生きて帰してはならない。

範吟

範吟 鈴木精成