月夜禁垣外を歩す(続天 65)

吟譜(PDF)

作者:柴野栗山

(一七三六~一八〇七年)・は邦彦。字は彦輔(ひこすけ)、号は栗山。元文元年四国讃岐の生まれ。江戸中期の儒者。後藤芝山(しざん)に師事し、のち阿波蜂須賀藩の儒者となった。その後幕府に迎えられ昌平黌(しょうへいこう)教授となり、朱子学を振興させた。朱子学以外の学問を修めた者の登用を禁止する運動を幕府にし、「異学者登用禁止令」が発令されるに至った。文化四年没す。年七十一歳。著書に「栗山堂詩集」「冠服考証」等がある。なお、高松市の牟礼(むれ)町に栗山記念 館がある。

語釈

*禁垣・・・・御苑の垣根・土壁。
*上苑・・・・帝の御庭・御苑。
*西風・・・・秋風
*桂香・・・・木犀(もくせい)の香り
*承明門・・・御所の正面の御門
*淸涼殿・・・帝が常にお住まいの御殿・紫宸殿(ししんでん)の西にある。
*霓裳・・・・霓裳羽衣(うい)の曲・天人を歌った西域伝来の舞曲・玄宗が愛好し楊貴妃はこの舞を得意とした。
*御觴・・・・帝の杯。

通釈

御苑のほとりには秋風が木犀の香りをただよわせ、承明門の辺りは月光が冴えわたり、まるで霜がおりたように白い。折から妙なる音楽が聞こえて来たが、今夜誰かが清涼殿で霓裳羽衣の一曲を奏して、帝に御杯(みさかずき)をさしあげているのであろう。