月下独酌(続天 66)

吟譜(PDF)

作者:管 茶山

(一七四~一八二七年) ・江戸中期から末期にかけての儒者・漢詩人。備後(広島県)神辺に生まれた。家は代々儒者で、幼少から書を好み詩を作り、十九歳のとき京都に出て和田東郭について医学を、また市川某について古文辞学を学んだ。のち二十四歳のころ朱子学に転じて、那波魯堂の門に入り西山拙斎・中山子幹・佐々木良斎らと交遊し、帰郷ののち家事を弟に託し私塾「黄葉夕陽村舎」を開いた。福山藩の藩校として認められ「廉塾」と改めた。茶山はその後塾の経営と育英の仕事に生涯を捧げた。八十歳で没した。

語釈

*月下独酌・・・明月の夜、月を見ながら、ただ一人杯を傾けること。
*金波・・・・・月の光。
*豪来・・・・・気が大きくなること。
*嫦娥・・・・・月の女神。

通釈

なみなみと注いだ杯を手にとって折から昇る明月を迎えると、杯の中には、月の光がキラキラと美しく映っている。月を見ながら飲むうち、次第に気が大きくなって盛んに飲んだが、いったい杯の中に入った月の女神を、幾人腹の中に飲み込んでしまったことか。

鑑賞

一人で飲む酒には心の安らぎがある。茶山は酒も強かったらしく、この詩には李白顔負けの豪快さがある。

範吟

範吟