越中覧古(天 18)

吟譜(PDF)

作者:李白

(七〇一~七六二年)盛唐の詩人、杜甫(とほ)と並び称される。蜀(しょく)の錦州彰明県青蓮郷(きんしゅうしょうめいけん せいれんきょう)の人で青蓮居士(せいれんこじ)と号した。 幼にして俊才、剣術を習い任侠の徒と交わる。長じて中国各地を遍歴し、四十二歳より 四十四歳まで玄宗(げんそう)皇帝の側近にあり、後再び各地を転転とし多くの詩をのこす。 安禄山(あんろくざん)の乱に遭遇して、罪を得たがのち赦される。六十二歳、病のために没す。奔放で変幻自在な詩風から、後世『詩仙』と称される。

語釈

*越中・・・越(えつ)の国で浙江省(せっこうしょう)紹興(しょうこう)市・春秋時代 越の国の国都(会稽 かいけい)があった
*破呉・・・越王勾踐が前四九四年呉に破られて会稽山にかくれ長い間辛苦艱難 (しんくかんなん)をかさねたが 忠臣范蠡(はんれい)が考案した策を用いて遂に呉を破って呉王 夫差(ふさ)を死にいたらせた前四七七年の戦いのことで「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」の故事を生んだ
*義士・・・呉に破れて、越王勾踐と二十年間苦楽をともにした忠義の家臣たち
*錦衣・・・錦織りの着物・勝利の恩賞として与えられたもので故郷に錦を飾ったわけである
*鷓鴣・・・南の越の地に多いうずらに似たキジ科の野鳥で「越雉(えっち)」とも呼ばれた、その悲しげな泣き声を人人は「行不得也哥哥(行かないで兄さん)」と聞いたという

通釈

越王勾踐が長年の仇であった呉王夫差(ふさ)を打ち破って国に凱旋した。あと、その戦いに従って行った 忠義な者たちは故郷に帰るとみな錦織りの服をまとって華美な生活にふけった。(一説に「故郷に錦を 飾る」がある)そのころ、宮廷の女官なども美しい人が多く、まるで花が春殿に満ちていると思えるほどであった。 しかし、今では、当時をしのぶよすがもなく、ただ鷓鴣の声だけが、寂しく、飛び交っているばかりである。

範吟

素読・範吟 鈴木精成

伴奏

伴奏(2本)

伴奏(6本)