山中の月(天 96)

吟譜(PDF)

作者:藪弧山

(一七三五~一八〇二年)江戸時代中期の学者。肥後熊本の人。父は真庵といい、文学節義の人であり、兄の愧堂は藩士として業績を大いに上げた人である。弧山は早くから経史を読み詩文に才を発揮した。藩より奨学金を与えられ江戸に遊学し、後京都に三年留まり、肥後に帰った。すぐ藩校の時習館の訓導に抜擢されたが、その時まだ二十歳で前例にない就任であった。やがて三十三歳同校の教授となる。教育者としても優れその門から伊形霊雨を始め多くの俊英が輩出した。

語釈

*東山・・・・・東方の山。
*幾重の山・・・たくさん重なり合った山。
*山路・・・・・山道

通釈

東の方の向こうに山又山とそびえているのを見て驚く。さらに山の南側も、そして北側も幾重にも山が重なり合ってそびえている。山道を進んで行くと山道は尽きてしまうけれども、山は尽きることなく、まだ多くの山がそびえている。山で望む月はというと、山の端から出て、又山の端に沈んで行くのである。

範吟

範吟 鈴木精成