常盤孤を抱くの図に題す(天 184)

吟譜(PDF)

作者:梁川星巌

(一七八九~一八五八年)江戸後期の漢詩人。作者)名は孟緯、美濃の富豪な農家に生まれる、諸国を吟遊すること二十年、江戸神田に吟社を開いて教え門下生千数百人あまり、京都に移り勤皇の志士と交わり国事を議す、安政五年七十才にて没す。

語釈

*笠檐・・・笠のひさし。
*呱々・・・乳飲み子の泣く声。
*三軍・・・大軍のこと。(一軍一三五〇〇人)

通釈

雪は笠のひさしに降りそそぎ寒風は袂をひるがえす。泣いて乳を求めているがそれを聞く常磐はどんな気持であろうだが心配するには及ばない後に鉄拐山の険しい頂きで三軍を叱咤したのはほかならぬこの声であった。

参考

田氏女玉葆(でんしのむすめ ぎょくほう)の「平治の乱後、常盤が三児(今若、乙若、牛若)をともない大和龍門の地をさしてのがれゆく雪中難儀のさまを描いた図」に題した詩。義朝の遺児頼朝(今若)範頼(乙若)義経(牛若)の三人。ことを思い出した。

範吟

範吟 鈴木精成