半夜(天 199)

吟譜(PDF)

作者:良寛

(一七五八~一八三一年)江戸時代後期の僧侶。本姓山本、幼名栄蔵(えいぞう)、のち文孝(ふみたか)と改めた。字は曲(まがり)、出家して良寛また大愚(たいぐ)と号した。 越後(新潟県)出雲崎の人、家は代々神職と名主(なぬし)を兼ね父泰雄は以南(いなん)と号して越後俳壇(はいだん)の雄であった。良寛はその長子。 成長して備中(岡山県)玉島の国仙和尚(こくせんおしょう)に学び、のち諸国を行脚して帰国し国上山(くがみやま)の五合庵に入り、四十七才から十三年間 ここに住んだ。晩年麓の乙子(おとご)神社の庵に移り天保二年一月貞心尼(ていしんに)に看取られ没す。時に七十四歳。良寛は俳句、 短歌に一家をなし書もまた当代第一と称せられた。

語釈

*半夜・・・・よなか。夜の半ば。
*山房・・・・山の庵、五合庵(ごごうあん)をさす。
*黄梅雨・・・梅の実が黄色に熟すころの雨。つゆ。
*蕭蕭・・・・ものさびしいこと。雨や木の葉が降りそそぎ舞い落ちるさま。
*虚窓・・・・誰もいない部屋。または人のいない部屋の窓。

通釈

過ぎ去った五十余年の生涯を顧みると、人間社会のことは是も非も善も悪も、すべて夢の中 のことのように感じられる。
この山の庵に独り坐っていると、五月雨(さみだれ)が真夜中の窓にさびしく降り注ぐのであった。

備考

この詩は作者良寛の天衣無縫(てんいむほう)の性格の如く全く破格の詩である。平仄(ひょうそく)も韻も度外視 されているが人間良寛の悟り切った心情がにじみ出ている。

範吟

素読・範吟 鈴木精成

伴奏

伴奏(2本)

伴奏(6本)