貧交行(天 207)

吟譜(PDF)

作者:杜甫

(七一二~七七〇年)・盛唐の詩人。字は子美。居処によって、少陵と号する。工部員外郎という官職から、工部と呼ぶ。晩唐の杜牧に対して、老杜と呼ぶ。さらに後世、詩聖と称える。鞏県(現・河南省)の人。官に志すが容(い)れられず、安禄山の乱やその後の諸乱に遭って、流浪の一生を送った。そのため、詩風は時期によって複雑な感情を込めた悲痛な社会描写のものになる。

語釈

*貧交行・・・貧しい時代の交友の歌。
*紛紛・・・・乱れ散るさま。混じり乱れるさま。
*輕薄・・・・うわすべりで、真心がない。
*管鮑・・・・春秋時代の管仲(かんちゅう)と鮑叔牙(ほうしゅくが)のことで、

通釈

手をひるがえせば雲となり、手をくつがえせば雨となる。(情況に合わせて、態度をころころと変える友人たちのさまを謂う。)入り乱れる数多くの軽薄なさまは、数える必要もない。ご存じでしょう、管仲と鮑叔牙の貧しい時代の交わりを。この交友の精神は、現在の人々は土くれのように棄ててしまった。

備考

◎管仲・・・斉の宰相。安徽省の人。親友鮑叔牙の勧めで桓公に仕え、斉を強国とした人物。
◎鮑叔牙・・・春秋時代の斉(せい)の政治家。斉の桓公に仕え、友人の管仲を宰相に推薦して、桓公の覇道を達成させた。

 

範吟

素読・範吟 鈴木精成