舟大垣を発し桑名に赴く(天 216)

吟譜(PDF)

作者:賴 山陽

(一七八〇~一八三二年) 名は襄(のぼる)、字は子成(しせい)、号は山陽。大坂江戸堀に生ま れた。父春水は安芸藩の儒者。七歳叔父杏坪について書を読み、十八歳江戸に遊学した。二十一歳京都 に走り脱藩の罪により幽閉される。のち各地を遊歴し、天保三年九月病のため没す。年五十三。著書に「日本外史」 「日本政記」「日本楽府(がふ)」等がある。

語釈

*大垣・・・岐阜県大垣市 昔は木曽川舟運(しゅううん)の要所
*桑名・・・三重県の桑名市 伊勢湾に面す当時海運の要所
*蘇水・・・木曽川のこと 岐蘇川(きそがわ)とも書く
*一篷・・・一そうの船 篷(ほう)はとま
*濃州・・・美濃(みの)の国(今の岐阜県)

通釈

木曽川の流れははるかに遠く海に注いでいる。この川を自分は今舟で下っているのであるが、 時折り櫓の音や頭上を渡る雁の声を聞くと故郷のことが思いだされる。 今ひとり故郷を遠く離れたこの地にあって、今年もまた暮れようとしている。降りしきる風雪の中を一そうの篷舟 (とまふね)に乗って桑名に向かって美濃の国を下ってゆくのである。

範吟

範吟 鈴木精成